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「旅猫リポート」を読みました

県庁おもてなし課、植物図鑑、三匹のおっさんふたたび、空飛ぶ広報室と最近ワタクシは有川浩(ありかわひろ・女流作家さんです)にハマっています。

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そして昨日、発売一ヶ月ですでに今年ベストのうわさまで流れている最新刊「旅猫リポート」を読了しましたので、旅猫リポートのリポートです。

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漱石のような猫語りで始まる「旅猫リポート」。でも内容は、強い縁で結ばれた野良猫のナナとサトルが、銀色のワゴンに乗って懐かしい友人達を訪ねるロードゴーイングノベルです。

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かつての親友たちとの再会は迎える人たちにも小さな変化をもたらし、まるでそれまで生きた時をおさらいするかのようなサトルとナナの行脚はやがて、北の果て北海道でゆっくりとゴールを迎えます。

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天涯孤独な野良猫のナナは名実共に立派な「サトルの猫」になり、暖かな悲しみの中で物語は終わります。

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途中あたりからもしやもしやと嫌な予感を感じつつも、ページを繰ることを止められません。最後の50ページは、静かな誰もいない部屋で読むことをお勧めします。冬にオススメ。涙腺のゆるみを実感させてくれる一冊です。※写真はすべて当館のりんちゃんです。

<12月の那須高原>
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数日前の当館駐車場。朝見ると、野ウサギの足あとがテンテンと続いていました。18日現在道路や駐車場に雪はありませんが、もし降ればひと晩でこんなふうになります。お車の方は雪道の用意をお願いいたします。



<コースケ>
とある「のっぴきならない事情」からナナの新しい飼い主を探すことになったサトルは、小学校時代の親友コースケのもとを訪ねます。二人の親交のきっかけとなった昔の猫ハチの思い出話に花が咲きますが、ケージから出ることを絶対拒否するナナに根負けし、里親話は流れることに。でも、帰路なんとなく嬉しそうに車を運転するサトルの表情をナナは見逃しません。

<ヨシミネ>
次に訪れたのは農業を営む中学時代の親友ヨシミネ。両親を事故で亡くしたサトルとネグレクトの末の離婚でおばあちゃんに育てられたヨシミネは、出会ったときから通じ合うものがあるようでした。ネズミ対策として猫を必要としていたヨシミネが飼っていたダメ仔猫をナナが教育し、ここでもサトルとナナはあまり残念ではなさそうに帰途に付きました。

<スギとチカコ>
富士の麓で犬猫歓迎のペンションを経営するスギとチカコの夫婦とサトルは、高校の仲良し同級生。ですがサトルに対する引け目を今も引きずっている飼い主スギの様子を感じ取ったペンションの看板犬虎丸とナナは折り合いが悪く、とうとう一戦交えてしまいやっぱり里親話は不成立に。でも泊まった翌朝、運転席からサトルがさらっと言った
「ねえ知ってた? 実は高校の頃チカコさんが少し好きだったんだよ」という告白で、逆にわだかまりは瓦解します。

<最後の旅>
「さあ、行こう。これは僕らの最後の旅だ」
サトルが言いました。いえ、ナナが言ったんでしょうか。

二人はフェリーに乗って北海道にいるサトルの叔母さんの家を目指しました。
山、海、虹、花、草を食む馬、ナナカマドの赤・・・。一生忘れることのない素敵な景色を思い出として目に焼き付けて、二人の旅は終わりを告げます。叔母さんと始まったつかの間の三人の生活。

そしてとうとう、サトルに「のっぴきならない事情」がやって来るのでした。

※ナナと同じく天涯孤独だったサトルの魂が、ナナと共に安らかにあることを願って止みません。いえ、全てをありのままに受け入れて、なお自然体で飄々と生きたサトルは、いつのまにかナナになっていたのかもしれません。今思い出しても泣けてしまう傑作本です。
by raspberryfarm | 2012-12-18 00:54 | -那須の日常