2012年 08月 01日
ひぐらしの鳴く頃に、那須で
でも、夕方になると決まってあの鳴き声が聞こえてきて、ひとり・ふたりと友達が帰っていく。じゃ、僕も帰ろう。うちへ帰ろう。ヒグラシが鳴くから、帰ろう。
毎年この時期になるとヒグラシの鳴き声を録音するためだけに那須高原へいらっしゃるヒグラシ研究家のご常連N様が、今年も当館へ1週間の長逗留をなさいました。今年は天候不順でワタクシもいらっしゃる直前までヒグラシたちの動向に気をもんでおりましたが、N様の到着と平行してヒグラシたちも一気に活発になり、N様によれば「目標としていた音にもっとも近づけた」録音ができたとお喜びいただけました。
それでは今回は、まさにシャワーのように無数のヒグラシが競い合い鳴き合う当館裏手の林の中へワタクシも分け入り、録音の様子を拝見することにしましょう。
林の奥へ行ってみると、あ、いらっしゃった。足音を忍ばせ近づいてみます。
「すみませーん・・・いいですか~?」
「あ、どうぞどうぞ。まだ今は本格的に鳴き始める前なんで、スタンバイしてるとこですから」
なんだ、それなら一眼レフ持ってくればよかった。音のしないアプリの入ったスマホで撮りました。それにしても固定のマイクが3台、他に手持ちが2台とすごい装備です。そうこうするうちにカナカナカナとあちこちで鳴き始めたので、ワタクシは早々に引き上げることにしました。
後日拝見させていただいた録音機材、の一部。すべてN家の家紋ストラップ付!
当館敷地内でN様が見つけた、ヒグラシのメス。N様の標本コレクションではメスは1%ほどしかいない貴重なものなんだそうです。このメスはまだ産卵前のようなので、このあと林に逃がしてやりました。ヒグラシというのは標高600m前後の(当館は標高603mの場所です)鬱蒼とした林のある場所に好んで生息するようで、N様によればこの付近はヒグラシがピンポイントで集まり鳴くスポットなのだそうです。
よろしければヒグラシシャワーを浴びて「バーチャル那須の林歩き」をお楽しみください!
いらっしゃる前にごっそり酒やお菓子を差し入れてくださった他に、なんと「日本産セミ科図鑑」までプレゼントしていただきました。高い本なのに・・・。でもすごく興味深い。N様、ありがとうございます。この場を借りて、お礼申し上げます。多くのオスが集まって鳴くのをコーラスセンターと呼び、その結果大音量となってメスを呼び遭遇しやすくなるなんて逆説的でおもしろいですよね。
カレンダーがめくれると同時に、ヒグラシの勢いがなくなりました。もうすでに当館庭ではオニヤンマと赤とんぼが飛び交い始め、秋の虫さえ鳴いています。そういえば今日下の道で彼岸花がポツンと一輪咲いていたなぁ。暑い毎日のなかでも、ゆっくりと季節が移ろいつつある那須高原です。
<今日のりんちゃん>
涼しい窓辺でお昼寝。